目を覚ますとリトル・ミス・マフェットが泣き腫らした目で布団に突っ伏していた/時計を見て、 カレンダーを見て、自分が丸一日寝ていたことに気付いた/熱で視界はぐるぐる/リトル・ミスの お腹が鳴った/台所で、ふら付く手元を叱咤して卵スープを作って食べさせてやった/

目の前で熱いスープをすするリトル・ミスを見てグランディーは唐突に衝撃を受け、
すると、視界が開けて、
What can I do for children ?
グランディーはほんのわずかに見た、極彩色を、見つけた、
(I can do ………)
リトル・ミス・マフェットは、真っ赤な目で恥ずかしそうに笑った。それを見てグランディーも幸 福な気分になった。リトル・ミスの小さな掌の中で湯気を立てる卵スープ。漂ういい匂い。
子供の為に何が出来る? 大人に出来ること………暖かい寝床を用意してやること・走りよってき たら手を広げて抱きとめてやること・屋根と床のある所に招き入れてやること・それに、あったか いスープをこしらえてやること………子供を守ってやること、かくまってやること、
children have their world !
グランディーの頭は霞がかかったみたいだった。高熱で身体の節々が痛んだし、視界も覚束ない、 リトル・ミスの口が動いているのに何を言っているのか聞こえないところから思うに聴覚も怪しい 、それでもグランディーは満たされた気持ちで、スープから立ち上る湯気を見ていた。

(生活のすべを持たない子供が、極彩色の世界を見ている為に、大人は、卵スープを作ればいい)

目を閉じると、少しだけ熱がましになった気がした。柔らかい風が、グランディーの額のあたりに ふわりと吹き付けたかと思うと、身体が急に軽やかになった。





「ソロモン?」
手の中のスープの最後の一口を飲み終えたリトル・ミス・マフェットが呼びかけた、ソロモン・グラ ンディーは枕に頭を預けたまま、返事もなく、反応もなく、