街角を歩いていると、一人の大道芸人が実に見事なナイフ捌きを披露した。グランディーは、ちらりとも視線を向 けずにその場を立ち去った。つまらない技だと思った・グランディーにはもう、世界は退屈なつぎはぎでしかない 。
ところが大道芸人は立ち去ろうとするグランディーを上手く呼び止めて、芸の中に翻弄しだした・早く立ち去りた いのにそれを許さない芸人がグランディーには不愉快で・不愉快で・不愉快で、仕方が無いので一言、
「ちょっと、すみません?」 Excuse me ?

道化た動作で謝罪した大道芸人・やっと解放されたグランディーは、角を曲がるときにちらりと振り返った、する と、そこには、
芸人に群がる沢山の子供たち! 次々に膨らんでゆく風船・湧き上がる甲高い歓声・手を叩く音・子供の目は、き らきら・きらきら………
あ・ああ・グランディーは気付いてしまう、子供が実に楽しそうに受け取った風船の内側に、美しい世界が煌めい ている………
(見てみるといい、あの子供の目を、きらきら宝石みたいに輝いている。子供はいつだって自分だけの世界を持っ ているんだよ―――――例えば色とりどりの風船の中に・例えばジャングルジムの天辺に―――――極彩色に光を 放つ素晴らしい世界を)
グランディーは、途端に胸にむかつきを覚えた、  ………Excuse me ? この気分の悪さを何としよう、そ う、グランディーは子供を羨んでいるのだ・羨みは嫉妬の裏返しで、嫉妬は劣等感の裏返し。
To say clearly, グランディーは、子供に対して、劣等感を覚えたのだ。

ある人はこういった。
世界は子供のもの・子供こそ世界を手中に入れるに相応しい。 Children have their world, and world is under children.
世界は子供のもの………children have world, and world have children. 大人になってしまったグランディ ーは、一言、 Excuse me ? そう言って薄っぺらい笑顔を貼り付ける。