ソロモン・グランディーの、幼い時の話。
 ある日、小さなグランディーは、ジャングルジムの天辺に上って、大きな声で、こう叫んだ、
「せかいはぼくのもの!」 I have my world !

 大きくなったグランディーは、ノートの罫線に沿って、小さな字で、こう書いた。
 世界は僕の所有物である。 I have my own world.
 そうして、出来上がった字を見て、目を見張った・なんだろうこの小さな字は。お行儀良く罫線の上に揃った 、小さな小さな文字・罫線と罫線の間たかが一行だって支配できないグランディーは、一体どんな世界を支配 できるというのか?
 グランディーは、自分の世界を見失った。 Where is my world ?

 こんな話を聞いたことがあった。
 時間は、人間一人ひとりで流れ方が違っていて、早く流れるときもあれば遅く流れる時もある・普通年を経る ごとに時間の流れるのは早くなっていく。子供のときは一日の経つのがひどく長く感じられたのに、年をとる と日々があっというまに過ぎ去っていくようなもの。
 つまり、時計の進み方と、体感時間の進み方は異なっている。そして、体感時間は、子供時代に人生の半分を 過ごしているように感じているのだという。具体的には、体感時間は、十九歳になった時点で、人生の半分を 過ごしたように錯覚する。
 十九歳!
 グランディーは二十歳である。もう人生のをターニングポイントを通り過ぎてしまっていた。