ねぇ、聞いて、僕今日はじめて学校に行ったんだよ。クリストファーは弾む声でそういった。真新しいパブリッ ク・スクールの制服、ぴかぴかの革靴は森の泥で少し汚れていたけれども、清潔な木綿の布で磨いたら誇らしげ な音がするだろう。彼の黄色い親友はいつになく悲しげな瞳でその様子を見守っていた。いつもうるんでいる彼 の瞳に、大きくなったクリストファーの姿が写し出されている。どんどん成長していくクリストファーに比べて 、彼はちっとも大きくならない。どんなに時間が経過しても、椅子に座った足が地面につくことはないし、深皿 やマグカップをしまっている戸棚に踏み台でつま先だって始めて手が届く。これからも永遠に大きくなることは 無いだろう。クリストファー・ロビンは新品の鞄の中から紙袋を取り出して、クッキーを持ってきたよ、と言っ た。そして破いた袋の上に広げた焼き菓子を指差して、得意げな表情をして見せて、習ったんだ、見ててよ、君 と僕とでちょうど八つずつなんだ、と言った。黄色い親友の目には、ただクッキーが食べきれないほど沢山ある というだけしか分からなかった。彼の瞳はいつもうるんでいる。迷いの無い指が、ひとぉつ、ふたぁつ、クッキ ーを数え上げていく。黄色い親友には、クリストファーが何の呪文を唱えているのか理解できない。ねぇ、数え れたよ、すごいでしょう――――うん、すごいね――――今日、習ったんだ。