二人で森の奥に生えている胡桃を取りにいったね。沢山とれたなら母さんにナッツのケーキを焼いてもらって、 君の為に持ってきてあげるって約束した。君はとても張り切って、ずんずん奥に進んでいってしまったから、二 人で道に迷ってしまって、怖くて泣いていたんだ。そうしたら君が、僕よりずっと大きな声で泣いているから、 僕よりずっと心細そうに震えて真っ赤な顔で涙をこぼしているから、僕は強くならなくちゃと思って、君の手を しっかり握った。そうしたら空に、大きな真っ白なくじらが、ゆっくり泳いできて、尻尾のひれを、安心して、 大丈夫って左右に揺らしたから、僕は泣き止んで、しゃっくりを上げている君の手を引いて、くじらについてい ったんだ。日暮れでくじらの体が白から桃色に変わる頃に、僕は君の住み家に辿り着いたよ。二人でしっかり抱 き合ったら、君がありがとうありがとうって言いながら泣くから、僕は、こわかったよすごくこわかったんだ、 君の首に涙の後が丸くしみになるまでじっとしていたんだ。結局胡桃は手に入らなかったけど、代わりに母さん はブルーベリーのパウンドケーキを焼いてくれて僕がそれを持っていくと君は秘蔵の蜂蜜をたっぷりかけて、つ いでに僕の皿にもたっぷり、口をべたべたにしておいしそうに食べたんだ。とっておきの甘い金色の夢を見て、 二人で眠ったよ。