昔々、あるところに、イカロスという青年がいました。彼の父は天才的な発明家であり、名をダイダロス
と言いました。
ある時、ダイダロスは些細な事がきっかけとなり、ミノス王の不興を買ってしまいます。怒れるミノス王
は、父子を捕らえ二度と外へ出られることのないように、出口のない高い塔に閉じ込めてしまいました。
塔は海に囲まれ、窓から見えるものといったら水平線と広い空くらいです。
二人は困ってしまいました。イカロスは途方に暮れて父を恨み身を嘆きましたが、けれどもダイダロスは
冷静に窓から外を眺めていました。そして、ダイダロスは、あることを思いついたのです。
「歩いて脱出できないのなら、空を飛んで脱出しよう。」
そして二人は協力して、灯りの蝋燭を材料にして蝋の羽を二対作り出しました。そして、イカロスとダイ
ダロスはその蝋の翼で空を飛び、塔を脱出したのです。
イカロスは羽ばたきながら歓声を上げました。空は高く、海は青く、世界はとても綺麗です。父のダイダ
ロスは、もっとゆっくり慎重に飛ぶようにと注意しましたが、イカロスの耳には届きません。海面には、
羽の付いたイカロスとダイダロスの影がうつり、波に揺らいでいます。
塔は背後に遠く、前方には見渡す限りサファイアのように輝く海が広がっています。とても綺麗だったの
です。あまりに綺麗だったので、イカロスは嬉しくなって、空高く舞い上がりました。父ダイダロスの声
が届かないほど高く、高く。
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