小さい頃、嫌いな子供が居ましてね。
私は言った。円卓には十数名の判事が全員席を連ねている。
 同い年の男の子だったんですが、私は彼のことが嫌いでした。傍若無人な餓鬼大将でしてね、意地悪で、プライドばかり高いくせに欲の皮が張っていて、今でも思い出すだに鳥肌が立つほど嫌いです。当時の私は強情でしたから、彼とはよく対立しました。真正面からのものではなくて、なんと言えばいいのか、嫌がらせの応酬みたいなものですけれど。
あるとき、私は彼の上履きを、近所の沼に沈めてやりました。貧しい国のことですから、靴なんて高級品です。そうそう買えるものじゃない。そうしたら、次の日、私の靴は学校の校門の柱の一番上、とがった部分に、突き刺してありましたよ。でっかい穴があいて、もう二度と使えませんでした。あの時は困りました、本当に。悔しいから、学校の彼の机の周り一面に、栗のイガを撒いてやりました。そうしたら、次の日私の机の中から蛇が何匹も這い出てきました。こうなったらもう後に引けません、お互いに何度も相手の不利益になるような悪戯を繰り返しました。一度始めてしまうと際限が無くて、結局私が村を出るまで続きました。幼いときの話です。
 窓の外で蝉が鳴いているのを聞きながら、円卓の白人達が不可解そうに眉を寄せているのを見回して、私は言った。
 ご存知ですか。どんなに幼い子でも、やったらやり返されることくらい承知しているんです。攻撃には必ず報復がある。鼠だって受けた痛みを忘れません。まだ五つにも満たない子供でも、やったらやり返されるということを理解しているんですよ、誰でも知っている。勿論私達も、知っていなければなりません、そうでしょう、ねぇ、そうでしょう。
 私は無罪にすべきだと思います。