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 パレードはまるで戦争のようだといったのは誰だっただろう。怪我人と老婆に囲まれて、西に消えつつある残照の光を求めて這い行くのだ。右手には小銃。左手には手榴弾。蹴落とす為に手を汚す、両手には黒い皮手袋を嵌めている。
 二十歳まで生きれば立派な悪党だ。私達はサン・バルテルミーで大量虐殺して生き延びた。ああ苦いなぁ。勝利の味はとても苦いので、砂糖を入れないコーヒーに似ているといつも思うのだ。
 国境を越えて敵兵と握手せよといったのは誰だっただろう。空から見れば国境なんてどこにもなかった。境目は本当に存在したんだろうか、例えば国と国の、人と人の、世界と世界の。ありとあらゆる断絶。天才だって糞もすれば自慰もする世の中において、人は本当に理解できない他人だったんだろうか。殺すべき敵はどこにいただろうか。手を握り、抱擁し、全く通じない言葉で挨拶をしたならば、皮膚だって心だって溶け出したかもしれなかった。
 明日殺す友を今日愛した。天国と地獄は、空の上にも土の下にもあらず、ただ人の心の中にのみあり、と言ったのは、あれは誰だっただろうか。明日刃で貫く胸を、今日腕いっぱい抱きしめ微笑と涙をそそいだからと言って、その心に嘘はなかった。真実真正、誓ってどこにも、虚偽などない。それはとても残忍な世界なのだと、人は言うが、けれども。
 けれども。