昔々。
魚人の住む海底の王国に、ある女が住んでいました。
女は魚人の男と結婚していました。
この女は男をとても愛していましたが、それ故に悋気も激しく、嫉妬深く、男の心を常に疑い、男の
他の女への心移りを恐れて男を束縛する事しか出来ませんでした。
そして疑惑の目の頂点に達したある日、女はとうとう男を殺してしまったのです。
男の心変わりを知っての行為でした。
しかし、男は無実でした。女を愛していた夫は、浮気などして居ませんでした。
全ては女の勘違いでした。女は自分の手で最良の伴侶を殺してしまったのです。
それを知った女は、過ちを冒した事にようやく気付き、大層罪を悔いましたが、けれども幾ら祈れど
死んだ男は帰っては来ません。
男は死んでしまっていました。
女は罪深い罪人でした。
罪の意識に耐えかねた女は、東の空の神に自分の所業に相応しい罰を願いました。
東の空の神は女を解し、その声に答え、朝日の光と共に、女の身体を海のあぶくへとお返しなさった
と言います。
それは遠い昔の出来事、魚人の国の御伽噺。
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