「櫻。」


「櫻が散ってしまった。」
「咲き誇る事は無い。咲いた刹那に散り行く物だ。散る為に存在する様な物で。」
「それではまるで無意味だ。そんな生は何を楽として生きてゆこうか。」
「まず拘り無い事だろう。もうじき木蓮が綻ぶ事だし花水木の光も目映い。花は櫻だけでは無いのだ から」
「しかし尚、木蓮も花水木も指に触れさす間もなく滅びてしまう。」
「その点において櫻とさして大差ない。」
「そんな果敢無さはまるで身に余る。いっそ元より咲く事の無ければ。」
「我々の指定する事にはあらねど。」