君の家はどこだっただろう。アルファベットを教えてあげて君が初めて書いたのは何だっただろう。一緒にうた
た寝をした場所はどこだっただろう。彼の好きな蜂蜜のある木はどこに生えていただろう。特別な日にしか供さ
れない秘蔵の蜂蜜はどこにしまってあっただろう。空にとけて消えていったくじらは二度と現れなかった。ジャ
ムは苦くなった。僕の布の靴は小さくなり泥だらけでゴミ箱の中に捨てられた。何度爪を切っただろう。何度髪
を切っただろう。扉を開けるのに背伸びをしなくても良くなったのはいつの事だっただろう。その代わりに彼の
住み家に入るときに背をかがめなければいけなくなったのはいつからだっただろう。彼の背は少しも伸びなかっ
た。瞳はいつもうるんでいた。蜂蜜の瓶に無造作に突き入れられた小さな黄色い手。さみしげに告げられた最後
の科白は一体なんだっただろうか。僕はきちんとさようならを言っただろうか。最後に去る時に一度だって振り
返っただろか。その時彼は笑っていただろうかそれとも俯いていただろうか。二度と再会することは無いだろう
相手へのキスは、どこにするのが適切だっただろう。その日空は晴れていただろうか。雨は降っていただろうか
。住処のグミは実っていただろうか。君は本当に存在していたんだろうか。存在するなら、君は今どこにいるだ
ろう。今泣いていやしないだろうか。新しい友達は出来ただろうか。一人で蜂蜜の瓶を舐めているだろうか。分
け合う誰かを得られないままだろうか。君は今どこにいるんだろうか。
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