このごろ、オレのクラスで流行ってる女の子がいる。
彼女の名前は、九茶(きゅうちゃ)流黄。(るき。)
1週間前に転校してきて、あっという間にクラスのヤツらをとりこにした。
小顔で、目がパッチリしてて、胸はプクッとボイン。
お尻が小さいのは、上品だと言うヤツもいれば、
女はボン・キュ・ボンでないとダメだと言いはるやつもいて、賛否両論だけど。


っあー、コッチ向いてくんねぇかなぁ。
流黄ちゃんは、オレのナナメ前の席。
話しかけようと思えば話しかけられる位置にいる。
でも、ダメだ。オレにはできねぇ。
だって、なんだか、だってだって………ダメなんだよーっ。


あー、流黄ちゃんが来てから全くもって授業に身が入らねぇ。
オレの目は黒板より先に視界に入る彼女の姿でいっぱいだ。
っと、その時、筆箱に彼女の腕が当たり、ぼん!と音を立てて床に落ちた。
チャックが開いていたせいで、彼女のかわいらしい筆箱は中のペンや定規を思いっきりぶちまけた。
あーあ、ドジだなぁ、流黄ちゃんは。
苦笑いをしていると、オレの椅子にコンっと何かがぶつかる音がした。
反射的に拾い上げてみれば、それはキティーちゃんのカバーがかかった消しゴム。
こっ、これは、もしや流黄ちゃんのっ・・・!
消しゴムを持ったまま硬直しているオレに気付き、
あらかた物を拾い終えたらしい彼女はにっこり笑って歩み寄ってきた。
お、お、お願い、お願いだ、近寄らないでくれっ。
緊張し過ぎて鼻がヒクヒクしちまうからやめてくれっ。
い、イヤだ、イヤだ、見つめないでくれぇーっ。
さっきと矛盾しまくりなことを悶絶しながら思っている間に、流黄ちゃんはオレの目の前に来ていた。
う、う、うわーっ、どっ、どうしよう。


「拾ってくれてありがとう」


そう言ってバチッとウインクされたが最後だった。
ウインクはフラッシュのように光って見え、オレは消しゴムを握りしめたまま気絶してしまった。