どうして血液の色などで区別されなければならないんだい?
ピストラパピットは呟いた。
そんな物、ヘモグロビンがあるかないか程度のちょっとした違いでしか無いじゃないか。そんなのが 僕の人格にどんな影響を及ぼすっていうんだ。
ピストラパピットは緑の野原に似た場所に居た。見渡す限りの新緑の中に、薄白い肌のピストラパピ ットが埋もれる様に佇んでいる。
区別だとか個性だとか、綺麗事を言っても結局は差別だ。僕らは何も望んでいないのに。ただ静かに 、ニンゲンとも関わらず、ひっそりと生きていたいだけなのに。
ピストラパピットはしゃがみこんで足元の小さな白い花を眺めた。風にゆらゆらと揺れている。
ニンゲンなんか。あいつらだって、皮も毛も色がバラバラじゃないか。僕らと変わりやしない。
やりばの無い怒りで肌を発光させて、強く思う。
――ニンゲンなんか!
不意に強い風が吹き、可憐な花びらが飛ばされそうになっている。控えめに綻ぶその花が散ってしま うのは余りに忍びないと思い、ピストラパピットはそっと両の手で花弁を包み込んだ。
風から守る様に優しく手の平で覆ってやると、花は優雅にこうべをたれる。
その風情に、故郷の母の姿に似た物を感じてピストラパピットは感慨に耽る。
母カパリンナは元気に暮らしているだろうか。遠い惑星にたった一人残してきてしまった。寂しい思 いをしていないだろうか。
関連してもう随分と疎遠になってしまっている父も思い出す。
父ポスタルマヤは生きているだろうか。黄色い皮のニンゲンに連れていかれてしまった。辛い思いを していないだろうか。
ピストラパピットの一族は基本的に戦わない。抵抗も反抗もその手段を始めから持ち合わせていない 。ニンゲンは羨ましい位に殺し合いが上手だった。
ピストラパピットは密かに考える。
僕らも戦わないといけない。僕らだって、搾取ばかりされている訳にはいかない。戦わなくちゃ。見 返してやるんだ、ニンゲンを。後悔させてやる。
ピストラパピットは手の平を握りこんだ。指の内で白い花が潰れた。


ニンゲンを、殺さなくちゃ!