そういえば今日も雨が降った。思い起こす限り昨日も一昨日もその前の日も、記憶に残っている天気 はいつも雨空だ。
私はよくよく雨に好かれているらしい。
愛用の傘は強酸の滴に溶かされてしまった。お気に入りのスカートは雨脚にむしられて裾がほつれて いる。やはり雨は止まない。
もう何年も何年もどんよりと曇ったまま変化の無い空は、今日もしとどに水分を含み、今にも飽和状 態だ。いっそ決壊してしまえば良い。レインコートを脱ぎ捨てて全身で雨を感じたならば、きっと身 体は水に還り跡には水溜りだけが残っているのだろう。
ああしかし私は知っている。知りすぎているほどに知っている。私がこの愚かな思想思考を棄てない 限り雨は止む事の無いという事。晴れ空の運命は全く私の責任だという事。私が心の奥底では雨を望 んでいるという事。


ああ今日も雨は降り続けている。