律法学者やパリサイ人たちが、姦淫をしている時につかまえられた女をひっぱってきて、中に立たせた
上、イエスに言った、 |
夢から覚めたとき、私は夢の内容をはっきりと覚えていた。時計を見ると、眠り始めてから三時間ほど
しか経っていない。床に就いたのが昼の三時、今は六時前で、外では夕闇が迫っている。部屋の中は暗
がりに侵食されていた。
変な夢を見た。私は機械の女で沢山の狼人間が町を闊歩していた。心臓をなくして、探しさまよってい
た。狼に言われたこと、「石を投げろ」。
私は毎日狼と戦っていて、いつも石を投げることを逡巡する、そのくせ狼を愛することも出来なかった
。今日明日からも狼と戦わねばならなかった、何度だって戦わねばならなかった。石を投げるか、さも
なくば良心に従い敵を愛せ、可能ならそのどちらも。その命令に従えない私は、いつも笑いたいような
泣きたいような顔をして立ち尽くしている。
狼にも機械にも、人間にもなれないなら、眠りたいというささやかな試みは、失敗に終わった。石は
手の中で所在無さげに黙りこくっている。
明日から、私はどう戦おうか、不断に続くたゆまぬ戦闘の日々、私はどう戦おうか。私は悩もうと開き
直ろうと日は沈みまた昇ることは、残酷なようでいて救済でもあった。
「あなたがたの中で罪のない者が、まずこの女に石を投げつけるがよい」。 |